所長に起きた出来事や思ったことをつづります
所長つれづれ
今日のできごと
平等院とパズル②
ということで、では、著作権ではないとすると、何の権利だろうか?ということになります。
これは、どうも「施設管理権」や「契約の不履行」が主張の根拠となるようなんですね。
一つ目。「施設管理権」というのは、その施設の管理者が施設を包括的に管理する権利のようです。
二つ目。「契約の不履行」は、入場する際に、お客さんがその施設管理者(お寺)と結んだ契約の内容を守っていない、という主張のようです。「えっ?入場するだけで普通契約なんてしないんじゃない?」と思うかもしれませんが、ハンコを押すような書面じゃなく口頭でも契約は成立します。実際、入場料を支払って施設に入る場合、「入場したいです。」という申込と、「お金を払ってくれればいいですよ。」という承諾が合致するので、成立してしまいます。なので、平等院は「入場の際に締結した契約の内容に違反している」という主張が可能なのでしょうね。もちろん、その契約の際(入場の際)、管理者側はきちんとお客様に「営利目的での撮影や商品化の禁止」といったことを伝えていることが前提の条件になるのですが。
また、その他いくつか論点があるようですが、本件は和解で終了していますので、今回のお話はここまで(ボロが出る前に終わります)。
なお、昨日の部分を含め、このような話は、美術館に入場して写真を撮る行為一般に適用できるので気を付ける必要があります。機会があれば改めてお話ししたいと思います。
平等院とパズル①
2020年10月12日に興味深いニュースがありました。
「(10円玉で有名な)平等院鳳凰堂の写真を使って勝手にジグソーパズルが製造販売されたため、平等院が このパズルの販売差し止めを パズル販売会社に対して求めていたところ、これが和解により決着した」というものでした。
ここでの面白さはいくつかありますが、弁理士としては、以下が興味ありました。
「どんな権利主張をして差し止めようと思ったのか」ということ、特に、「著作権は主張できるの?」ということです。
まず、「建築物」が著作権の対象になるか(著作物になるか)?というと、なるんですね。「この法律に言う著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。(この中の例示で)建築物の著作物」(著作権法第10条)。
で、次に、問題なのが、著作権の有効期間なんですね。著作権法によると「著作権は、著作者の死後70年を経過するまでの間、存続する」等と規定されています(著作権法51条等)。年数については最近改正があったので厳密には違うのですが、いずれにしても、11世紀頃に建立されたものですので、そもそも著作権法が無かった時代でもあり、仮に認めたとしても、とっくに著作権は切れているんですよね(ここでも面白い観点があるのですが、別の機会に)。
じゃあ、別の権利だよね、ということになり、弁理士の直接の範疇からは離れ始めてしまうのでした(明日に続く)。
契約と日本人
日本人と契約の「よくある相談」の時間です。
弁理士の仕事は「弁理士法」という法律に、特許などの知的財産に関する契約の代理や相談ができると記載されていることもあり、出願だけでなく、契約の相談を受けることが多くあります。
で、契約を見るときに、いろいろな場面を想定して、細かい主張を入れようとするのですが、「ここまで書いてしまうと失礼になってしまうのでは?」といったお客様の反応や、私にも心の葛藤が生じます。
それは、実際に契約というのは、相手の不義理な行動があった場合の罰のような条項を入れるのがそもそもの目的の一つなので、そのような行動があった場合を規定しようとすると、相手側から「俺を疑っているのか?」や「細かいこと言ってんじゃねーよ」のような反応を受け、お客様側もこれから行おうとする商売がむしろうまくいかなくなってしまうのではないか?といった気になってしまうためです。
そのため、細かい条項や、相手の不義理な行動を予測した条項が入れにくなり、最低限の条項のみ規定し、後は「別途協議」を希望する人もいます。こういう状況をみると、日本人というのは、互いの信用を重んじて仕事を行おうという傾向が強いところが良い点なのだな、と感じています。
ただ、別途協議だけにして契約を進めた場合で、揉めてしまうと、途端に苦しくなります。なんせ罰を規定していないのだから。
そのつらい経験をもとに、少しずつ相手方への失礼にならないよう細心の注意を払いながら交渉するというのはなかなかに大変で、法律的な解釈よりも、こっちの方が神経を使います。契約は、法律的な知識よりも、この相手とのバランス感覚の方が特に必要なようです(私が媒介又は代理で交渉される方でこのブログを読んでいただけた方には、是非とも私の苦悩をご理解いただけますと幸いです!)。
心を強くするための方法は?、もう少しうまいやり方があるのでは?、と悩んでいる毎日です。どうすればよいでしょうか?
・・・いつの間にか「私の相談」になってます?
知財セミナー
久しぶりの更新です。
時すでに遅しなのですが、昨日開催のセミナーで講師を担当しました。最近のコロナ禍でセミナーがWebでの開催がメインとなり、事前に動画を作成し、Youtubeにアップし、日時を限定して公開する、というセミナーでした。
どの程度見ていただけるのか不安でしたが、意外に見てもらえる人が多くてほっとしています。視聴いただいた方には大変感謝しております。ありがとうございます。視聴いただけなかった方にも次回以降、ご都合のつく場合は是非見ていただければと思っています。
事前申し込み者のリストを拝見したのですが、なんと千葉のセミナーであるにもかかわらず四国の方にも視聴申し込みをいただけました! 今までの対面のセミナーでは考えられなかった状況です。
なお、私の担当分の内容としては、商標の事例をもとに、商標制度の概要と、どのような場合に商標の出願を考えていけばよいのか、という25分程度のお話でした。
・・・見てほしいとは思っている一方で、自分の話している動画を見るというのは何とも言えず恥ずかしい気持ちになります。慣れなければ。。
強い特許って?
ここで問題です。
「強い特許」ってどのようなものだと思いますか?
誰も考えつかないような技術的に素晴らしい技術?
非常に精巧で複雑な技術?
確かに、技術的に素晴らしければ価値は高いかもしれません。
例えばノーベル賞を受賞した山中先生のiPS細胞等はすごいですよね。
特許としても稼いでいますよね。
これを見てしまうと「自分の発明なんて。。。」って思ってしまうかもしれません。
でもね、そうではないんですよね。
本当に「強い特許」というのは、
「その製品を作るためにはどうしても使わなければならない」特許なのです。
そして、極端なことを言うと「誰でも思いつくような」ものが多いです。
(もちろんそうでないものもあります。)
例えば、
「誰でも思いつくようなものが特許になるわけがない」と思いますか?
そうですよね。
でも、「特許出願をしたときは当たり前ではなかった」のです。
ポイントは、いずれ避けられなくなるであろう技術を、
如何に、早く先んじて出願してしまうか、ということです。
「自分の製品は簡単な改良だから」とあきらめるのではなく、
「簡単な改良だが他の人は回避できるか?」を考えてみる。
そして、その改良が新しく、そして効果があるのであれば、
出願を考えてみてはどうですか?
ただし、費用対効果が前提となりますので、その点は十分に弁理士と相談してください!!!