所長に起きた出来事や思ったことをつづります
所長つれづれ
今日のできごと
授業2021/11/09
今日大学で授業を行いました。14回シリーズのうちの第5回目。
今回は特許調査のお話。
特許調査はおおむね下記3種類あるということを事例を用いてご説明。
①出願系調査
特許出願等の出願を行う前に行う調査。
同じものだと権利化できないので費用の無駄を省く調査のこと。
ピンポイントで同じ公知例がないかを調べる調査。
②開発系調査
これから新製品の開発などを行うときに行う調査。
広い範囲にわたり、出願人、出願年、製品要素毎等において行う。
マーケティングとして行う調査。
広く浅く調べる調査。ただし気になるものはリストにして監視する。
パテントマップの具体的なイメージの例について様々な例を用いて説明。
③侵害系調査
開発の結果製品化する段階において、他社特許の侵害がないか調べる調査
漏れがないよう、また権利の成立状況等まで調べる必要がある
また、J-Platpatを用いた実際の調査について、ネットワークに接続して実演。
反省点としては、侵害系調査の場合に請求の範囲に着目して判断するというところで、特許請求の範囲の機能について説明が不足していたのではないかという点、アイデア発表の後に今回の授業を行ってもよかったのではないかという点(つまり第6回と第5回を入れ替えてもよいのではないか)、実演はかなりマニアックな内容になるため、その事前準備が今回は足りていなかったかも。
来年への反省です。
ソフトウェア特許のコツ①
ソフトウェア特許が認められるようになって、はや数十年。
ソフトウェア特許を書くときのコツをメモ。
ソフトウェア特許とは、コンピュータによるデータ処理を記載していくことによって成立させるものです。
しかし、コンピュータによるデータ処理は、画面上では見えにくい。
つまり、画面上に表れていない動作や計算方法については本当にやっているのかどうかわからないことが多い。
どのような計算を行っているのかがわからない場合、特許がとれたとしても、模倣した者が、本当に自分の計算方法を使っているのかどうかがわからない以上、侵害警告を行うことは難しい場合が多い。
複雑な式を導入することで、確かに特許性(特許のなりやすさ)は高まりますが、侵害発見が困難になります。請求項に入れるのは最後の手段というくらいに考えておいたほうが良いのです。
そのため、ソフトウェア特許は、入力情報、出力結果等の確実に画面上に出てくる情報をそのデータ処理の対象とすることで権利化し、その計算方法については可能な限り請求項に入れないことがポイント。
極論を言ってしまうと、審査官から「これらデータをどのように算出しているのかが曖昧である」といわれて記載不備の指摘をされるくらいがちょうどよいのではないかと、勝手に言い訳。
ボール
金曜日のフットサルは楽しかったのですが、蹴れず動けず、悲しかった。
そこで、フットサル用ボールを買ってしまいました!!
新型コロナのアビガン特許
新型コロナウイルス感染症に対して、世界中でその治療薬開発が行われています。
ところで、ニュースで「アビガン(一般名:ファビピラビル)」が新型コロナに聞くのでは?という話があったと思います。今日はこのお話。
ファビピラビルは、抗インフルエンザウイルス剤として開発された物質であり、富山大学と富山化学工業が共同開発した薬であり、すでに特許として成立しています(特許第4355592号「抗ウイルス剤」現特許権者:富士フイルム富山化学株式会社)。
しかしながら、中国が中国国内だけでなく日本においてもファビピラビルに関する用途発明を特許出願がなされていることがわかっています特願2020-173044)。
え?そんなことってあるの? と思うと思いますが、残念ながらありうるんです。
用途発明とは、たとえ既に知られた物質でも、その新たな用途(効果)を発見した場合、その用途に限定した形であれば、特許出願を行い、他の特許要件を満たす限りにおいて成立させてしまうことができるのです。
つまり、今まで新型コロナウイルスなんて存在していなかったのですから、実証データさえあれば「新たな用途の発見」という主張はそう難しくはなさそうですよね?
このブログの執筆時現在、日本の上記特許出願については、特許庁から拒絶理由が通知されているようですが、この結末について非常に興味があります。
もし仮に、中国の特許出願が成立した場合、 基本特許の権利者である富士フイルム富士化学であっても、新型コロナウイルスの治療薬として出荷しようとする場合は、中国人民解放軍(のアカデミー)に特許料の支払いをしなければならなくなってしまいます。。。
医薬品と特許①
最近の新型コロナウイルス感染症の拡大の状況下で、特許の話が出てくるときがあります。
国内的には「裁定制度」であり、国際的には「特許の南北問題」や「パテントプール」です。
今日はまず国内的な話題「裁定制度」のおはなし。
まず、”医薬品”は特許の対象になります。
つまり「新型コロナウイルス感染症の治療薬」等は特許の対象になる、ということです。もちろん、ワクチンも。
一方、製薬会社は人の病気の治療薬を開発する公益的な面を持つとはいえ、会社である以上、営利を追求する団体です。
そのため、利益を最大化するために医薬品について特許権を取得し、他社が同じ医薬品を製造販売できないようにします。
一方で、皆さん感じると思うのです。
「こんな人類の未曽有の危機のときにもお金優先になってしまったらどうするの?」って。
確かに、特許権者がすごく効果のある薬を開発して特許をとったけど、わざと生産量を落として不足な状態を作り、価格を釣り上げて販売してしまったらどうなるでしょう?
命を人質に取られてしまいますよね?
そこで、出てくるのが「裁定制度」。
いくつか種類があるのですが、今日話題にする裁定制度は、ざっくり言うと
「公共の利益のために他人(特許権者以外)にもその特許を使えるようにする」という制度です。
これは経産大臣に求めることができます
この制度によって、上記のような問題が生じうる場合、強制的に、特許権者でない者に特許の対象となる医薬品を製造販売させることができるようになるのです。
ただ、今まで裁定制度が使われた例はなく「抜かれない伝家の宝刀」状態であり、この度の新型コロナウイルス感染症では使われるのではないか?と思ったのですが、国内的にはまだ特許が取得されたという話はあまり聞かず、やはりまだ使われないようです。