©の由来

 ところで、ホームページや広告等様々なメディアで「©」のマークを見たことはありませんか?

 例えば、Yahoo Japan!のHPの下には

 「©Yahoo Japan」のような記載があります。

 これって何でしょうか?

 実は、著作権を主張しているマークなんです。

 で、その根拠は「万国著作権条約」というものです。

 万国著作権条約というのは、1955年に発効した国際条約なんです。

 万国著作権条約の第3条第1項には、下記のように記載されています。

 締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合には、この条約に基づいて保護を受ける著作物であつて自国外で最初に発行されかつその著作者が自国民でないものにつき、著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに©の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。©の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げなければならない

 なので、この規定に従って表記することになります。

 具体的には、「©記号+著作権者の名前+最初の発行の年」という表記が必要になる、ということですね。

 では、なぜこのような表記をしなければならないのかというところですが、

 実は、記載する必要は必ずしもないのです!!!

 なぜかというと、この前段に書いてあります。

 改めて読んでみると、「締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合」に、

 「その最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに©の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。」とあります。

 ちょっと難しくなりますが、ざっくりいうと、「著作権の保護のために文化庁等への登録をしなければならない」といったような「方式主義を採用している国」の場合、©が上記の所定の表記となっていれば、保護する必要がある、ということです。

 一方、日本では、著作権の権利発生要件に登録を要件としていない「無方式主義」を採用しているため、©を付する必要がそもそもないのです。

 ただ、確かに、方式主義を採用する他国でも著作権を保護しようとするのであれば必要になるかもしれませんが、現在日本と関連の深い国のほとんどは無方式主義を採用し、ベルヌ条約に加盟しているため、実質的に必要がないといえます。 

 とはいえ、©がついていると、「私の著作権ですよ!!」という意思表示が明確に示されていますので、この意味であれば十分意味がある、とは言えますね。

 確かに私もつけるかつけないか、、、、というと、・・・・つけます。

  ©マークの余談でした。

 なお、ベルヌ条約についてはまた別の機会にでもお話ししますね。

音楽教室と著作権料

 JASRACと音楽教室事業者(音楽教室を守る会)との裁判について、最高裁が上告を棄却したというニュースがあったので、今日はこのお話。

 音楽教室訴訟に決着「生徒演奏に著作権料不要」 JASRAC「主張が認められず残念」(Impress Watch 2022/10/25記事より引用)

 ことの発端は、2017年にJASRACが音楽教室から音楽著作権料の徴収を始めると発表したことによります。

 これに対し、音楽教室事業者らは反発。裁判までもつれ込んで、やっと決着がついたというお話。

 ここで、「音楽教室は著作権料を『一切』支払っていなかったのか?」と思われるかもしれませんが、これは誤解。

 今回の問題は、著作権の特徴的な性質が、利害として大きくクローズアップされた例であり、セミナーをやっていると非常に説明しやすい例として重宝しています。個人的な見解は別にして。。。

 

 

 著作権は、実は、音楽(著作物)の利用する行為ごとに権利が発生しています。つまり、著作権は、行為ごとに認められた権利の集合になっているのです。

 著作権は、例えば、他人の音楽を演奏する権利である「演奏権」音楽の楽譜をコピーする権利である「複製権」といった具合に、著作権という制度は、複数の権利があり、そのそれぞれの権利を使いたいのであれば、著作権者にそれぞれ許諾を受けなければなりません。めんどくさいと思いますよね。でも、法律上はそうなっているのです。

 

 具体的には、子供を音楽教室に入れるとき、練習する楽曲が印刷された「教本」を買いますよね。「印刷」ですので複製されている、ということです。

 実はこのとき、音楽教室は買ってもらった「教本」に記載された楽譜について、「複製権」の許諾を作曲者から貰っているため、まともな音楽教室は、作曲者にこの分の著作権料を(JASRAC経由で)支払っています。

 

 ただ、音楽教室で買った楽譜を見るだけでは上達しないので、当然、先生からのレッスンを受けるために、先生の前で弾きますよね。これが子供の演奏であり「演奏権」の無断使用になっていたということ(JARACの主張①)です。

 また、先生もお手本を示すために生徒の前で演奏しますので、これも「演奏権」の無断使用であったということ(JASRACの主張②)です。

 第一審の東京地裁では、JASRACの主張をすべて認め、子供の演奏も、先生の演奏も、無断使用であるため、演奏権についての料金を支払うべき、と判断しました。

 一方で、控訴審である知財高裁では、上記JASRACの主張①はないだろうということでJASRACの主張②を認め、「先生の分の演奏は演奏権料の支払いをしなさい」ということとなり、最高裁でもそのように判断した、ということになります。

 

 この結果、どうなるかというと、今までは、”例えば” レッスンの教本が1000円で、著作権料(複製権)が3%だった場合、30円をJASRACに支払うだけでよかったのですが、

 今回、演奏権が認められたことにより、”例えば”毎月8000円のレッスン料にも、著作権料が発生するようになるため、支払いが発生することになる、ということです。

 2017年の段階では、生徒の演奏権分と先生の演奏分で2.5%と主張しているようでしたので、先生分のみ支払うということになれば、仮に半分程度の1%としても、毎月80円(年間960円)の著作権料が発生することになります。

 この額の差は非常に大きいですね。これが、JARACと音楽教室側とで争いになった原因です。

 

 この結論に基づいて、今後JARACと音楽教室との間で取り交わされる戦略は下記の通りかと考えてみます(あくまで個人的な感想です)。

 ①JARAC側

 著作権料率を可能な限り当初の主張の2.5%に近づける(裁判における主張に矛盾しない範囲で)。

 たとえば、先生の演奏のウェイトがいかに大きかったのかを強く主張することで割合を大きくすることが考えられます。

 

 ②音楽教室側

 著作権料を可能な限り低くできるよう、JASRAC管理楽曲を外す。例えば、著作権の切れたクラシックの曲だけにしたり、JASRACに管理を委託された楽曲を除外する。

 あと細かな点はいくつかあるのですが、複雑になりすぎるので省略。

 

 ただ、いえることは、レッスン料の値上げをしないのであれば、それは先生と音楽教室の減収に反映される(400万円程度の収入であれば、1%~2%とすると4万円~8万円程度の減収)ことになるため、レッスン料の値上げを考えざるを得ないのは確実だろうな、ということですし、教本に掲載される楽曲の選択も大きく練り直される可能性がある、ということです。

 

リーチサイトと著作権

 資料を作成していたときにリーチサイトの話に触れることがあったので、
ブログでも言っておこうと思い確認したところ、
少し腑に落ちないところがあり、ここを少し調べてみたのでお裾分け。

 2019年10月から改正された著作権法が施行され、
下記のリーチサイトの行為が対象になるのはわかりますが、
これって今回の法改正前の話であり、
この点の解釈が??だったので。

 まずは、海賊版のリーチサイトについての下記ニュース

海賊版リーチサイト「はるか夢の址」運営者に実刑判決

 不正アップロードされた漫画や雑誌をダウンロードできるリンクをまとめたリーチサイト「はるか夢の址」運営者らが著作権侵害などの罪に問われた裁判で、大阪地裁は1月17日、主犯格の男3人に対してそれぞれ、懲役2年4月~3年6月の実刑判決を出した。講談社は「主犯格の3人すべてに執行猶予のつかない実刑判決が下されたことは重大な意義がある」とコメントしている。

 3人は複数の投稿者と共謀し、2016~17年ごろ、漫画「NARUTO-ナルト-」など68点が読める海賊版のリンク先をサイトに掲載、多くの人が読める状態にした。判決で大阪地裁は「起訴された68点の書籍データに限っても、被害は約4000万円にのぼる」とし、「サイト全体では極めて大規模、悪質で結果も重大」と指摘した。

 講談社によると、はるか夢の址をめぐってはこれまで、海賊版をアップロードした主婦なども、懲役刑の有罪判決を受けているという。

引用先:2019年1月18日[ITmedia News]
URL:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1901/18/news085.html

 「リーチサイト」とは、
(自身とは別の)サーバーにアップロードされたコンテンツに、
(自分のサイトに訪れた)ユーザーを(アップロードサイトに)誘導するサイトをいいます。

 具体的には、コンテンツにアクセスするためのURL(リンク)が張られたサイトとのことをいうようです。

 リーチサイトについては、文化庁は下記のような資料を作成しています。

引用:文化庁 H2812.27 文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会(第4回)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h28_04/pdf/shiryo_8.pdf

 上の資料によると、多数の流れでサイトは動いていたようです。
 ①「直接侵害者」が著作物をストレージサイト(ストレージ)に違法にアップロードする
 ②「サイト運営者」がリンク情報を掲載できるサイトを立ち上げる
 ③「リンク提供者」がサイトにリンク情報を提供する(サイト運営者とは限らない)
 ④「ユーザ」が「サイト」アクセスし、⑤ストレージにアクセスする
 ⑥「ユーザ」に著作物が送信される(ユーザーがダウンロードする)
 ⑦「ユーザ」はダウンロードした著作物を複製・視聴する

 「夢の址」の問題では、上記の行為が発生していますが、②のサイト運営者が裁かれている、ところがミソです。

 まずは簡単なところから。

 まず①の「直接侵害者」がストレージに違法にアップロードするという行為は、著作権法上の公衆送信可能化権(著23条かっこ書)の侵害となります。これは従前から変わらず、著作権の侵害として罰せられることになります。

 ④「ユーザ」が「サイト」にアクセスすることは現状違法ではありません。

 また、⑤「ユーザ」がストレージにアクセスすること自体もまだ現状では違法ではありません。

 また、⑥「ユーザ」が著作物をダウンロードする行為は、「直接侵害者」が公衆送信を行ったと考えることができるので、この点は上記①と同じです。
 ここではまずユーザではなく、直接侵害者が罰せられます。

 なお上記⑥の場合「ユーザ」はどうなるのかというと、微妙なところで、
「情を知って」「頒布の目的をもって所持」している場合等は、
著作権の侵害とみなされてしまいます(著113条)。
 「情を知って」とは、違法なものであることを知っている、ということです
 また単なる所持(記録媒体に保持している状態)は問題がないのですが、
頒布しようとしていた場合は、侵害とみなされてしまうということです。

 

 そして、残るのが②と③の問題になります。

 まず②「サイト運営者」がリンク情報を掲載できるサイトを立ち上げる行為ですが、これについては、上記の判決において「~共謀の上~各書籍データを自動公衆送信可能な状態にし,もってそれぞれ前記著作権者の著作権を侵害した」と認定しています。共同正犯ということですかね。実際に上記記事に記載されているように、違法アップロードした主婦も懲役刑になっているようですし。

 また一方で、③「リンク提供者」がサイトにリンク情報を提供する行為ですが、
②の行為はリンクを張っただけであり、リンク自体は著作物として認められる可能性は低く、コンテンツを違法アップロードした場合はともかく、リンクを張っただけでは侵害を問うのは難しのではないかと。

 しかし、上記の関連の著作権法違反を平成30(わ)4356では、「サーバーコンピュータ内に,違法にアップロードされた漫画等の書籍データのリンクを掲載するなどして,不特定多数の者に対して書籍データを自動送信可能な状態にした」とあります。結果としてリンクを張った行為が「自動送信可能な状態にした」ことの一連の行為の中に含まれ一緒に論じられているようです。

 ただし、③だけの行為、「サイト運営者」でもなく「直接侵害者」ではない単なる「リンク提供者」の場合はどうなるのかは結局わかりかねます。ただ、リンク提供者についてはYOL事件(東京高裁H17.10.6, 平成17(ネ)10049)が参考になるかもしれません。これは別のときに。

 

 リーチサイトは、そのサイトのサーバー自体にコンテンツ(著作物)をアップロード(複製)しておらず、あくまでURLを張っているだけにすぎないため、直接的に著作権を侵害しているとはいえないのではないか?といった課題があります。また、URLを張り付けるのもユーザーであったりするので、果たしてサイト運営者が侵害しているのかということも問題になりえます。

 これに関し、2020年10月に改正著作権法が施行され、上記の②、③を抑えるための法改正がなされています。この法改正については別の日にコメントしたほうが良いと思うのですが。一応下記のような変更になっています。

著作権法第113条
 1 (省略)
 2 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
一 次に掲げるウェブサイト等
イ 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第百十九条第二項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
ロ イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
二 次に掲げるプログラム
イ 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム
ロ イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

 上記の変更により、②が侵害になる可能性があるということのようです。なお③については、まだ曖昧ですね。

 ただ、この法改正はわかりにくく、複雑化しています。さらに、「殊更に誘導する」「侵害送信元識別符号(URL)が強調されている」「主として」等の判断基準が曖昧な表現が多く、自分の行為が侵害か否かの判断が難しくなります。

 「違法な著作物にアクセスをするURLの貼付けはすべて著作権侵害だ」と言ってくれればまだ明確なのですがね。

教育機関における著作物の利用(上映)

 

大学等の教育機関は、他人の著作物を複製することができます(著35条)。
ただ、最近はパワポでの授業が増えてきており、この行為が気になります。

他人の著作物が載った複製物の印刷物を配布することは著35条の範囲内で許されますが、
パワポのスライドをプロジェクタで写した場合はどうなるのか?
という問題があります。

 

パワポのスライドをプロジェクタで写す行為は「上映」であり、
著35条で許容される「複製」ではありません。

 

一方で、著38条では、
①営利を目的とせず、
②聴衆又は観衆から料金を受けない場合は、

著作物について上映、口述等をすることができると書いてあります。

 

つまり、教育機関においては、この条文により「上映」も許される、ということになります(結論)。

  

  

結論はこうなるようなのですが、
実は少し腑に落ちないところがありますので、今日はここのお話を。。。
(難しい話が嫌いな人はここまでで結構です )

  

  

著38条では、確かに上記①②を満たしていればよいのですが

この条文のただし書きに、
「上映等について実演家又は口述を行う者に対し、報酬が支払われる場合はこの限りでない」旨の記載があります。

そして、この「報酬」か否かの例として下記があるといわれています(加戸「著作権法逐条講義」(6訂)302-303)

(報酬とは解釈されない場合の例)
(A) 弁当代
(B) 交通費
(C) 宿泊施設代金
(D) 消防庁の音楽隊の隊員に対する給与

(報酬と解釈されてしまう場合の例)
(E) 上記弁当代等の名目であっても実費を超えるような金銭
(F) 職業的音楽バンドの人が月給制の場合の給与

 

・・・ここで、今日私が言いたいのは
上の(D)(F)二つの演奏家に対する給与の例って何が違うのさ?
ってことです。

逐条講義によると(D)の理由は、
公務員としての職務に従事する一般的な対価であり、
演奏行進などの場合のその演奏を行うことについての報酬ではない
ため
ということらしいのです。

 

でも、公務員であるとしても、
消防庁の「音楽隊」って、演奏に専念することが前提の職務ですよね?

 消防庁の現場の救急隊員が署内のサークル”音楽隊”に属していて演奏するのであれば、
確かにその対価はもらっていないと理解できるのですが。。。

逆に、実質的に職業的音楽バンドの人が一般企業の一部署に勤める形式にして、
「事務的作業の対価」として給与をもらっている体にしたらどうでしょうか?

・・・これは普通にありそうですよね?

 

それとも、
公務員であるか否かで違うということになるのでしょうかね?
個人的にはあまりにしっくりこない理屈です。

ただ、上記の(D)の見解は
別の方(作花「詳解著作権法」4版 367)によっても支持されており、

 学校の先生に対する見解について、
教員の給与についても、学校の教育・研究及び組織運営に携わることに対する対価であり、
  著作物の口述に対する報酬でない
」と言っています。

つまり、結論としては、
学校の教員であれば、給与を受け取っていても、
著38条でいう報酬には該当しないため、
著38条に基づき自由に使用できる
ということです。

 ・・・でもね、そうなると
人にいろいろな知識を口述にて伝達するのが前提のはずの教員に対してこれを言ってしまうと
「著作物の口述に対することが前提で報酬を受けている人」ってそもそも居るんかいな?
ってことになりますよね?

 さらに、これが許されるのであれば、
学校の授業でアニメ映画を授業と称してそのまま流しても問題なくなりますよね?
冗談だと思うでしょ?でもたまに居るんですよねこれが。。。

 でもだめなら、どうやって禁止できるでしょうか?この報酬の解釈を限定するんでしょうか?

 ここで仮に、上記報酬の解釈に例外を設けてNGにしてしまったら、もっと複雑な場合分けが必要になり、
もうこの条文の解釈なんて「その場その場でなんでもあり」になってしまうし、
これから行おうとする自分の行動が許されるかなんて予測不可能又は困難になってしまいます。

 著作権法の場合、個別的な解釈が過ぎる気がします。。。

 著作権は、相談を受けても、いろいろな場合分けがありすぎて、お客さんから質問されても明確な回答ができないのが非常に残念です。

 私としては、せっかく著35条があるのですからこちらに教育的な上映を入れてしまえば?という意見なのです。

【福井】著作権セミナー

 福井県で著作権についてのセミナーを行いました。

 教育機関で教材を作成する場合の著作権で注意すべき点について説明するセミナーで、9時半から16時半まで概ね6時間程度。

 このセミナーは日本各地で行わせていただいており、最初受けたときは6時間も著作権で話し続けられるのか。。。と思っていましたが、今は結構慣れてきました。 人間の素晴らしい能力「慣れ」に感謝!

 最初少なかったPowerPointのスライドも、秘伝のタレのように継ぎ足し継ぎ足し、直し直しで300枚以上になりました。勉強にもなります。

 特に、日本各地で呼んでいただけるので旅を兼ねて、非常に楽しみにしています。

 また、千葉から離れた地域でポケモンを捕まえて、千葉で捕まえたポケモンと交換するとその交換距離が100km以上になるため、不思議なアメXLを確実にもらえるんですよね。。。

平等院とパズル①

2020年10月12日に興味深いニュースがありました。

「(10円玉で有名な)平等院鳳凰堂の写真を使って勝手にジグソーパズルが製造販売されたため、平等院が このパズルの販売差し止めを パズル販売会社に対して求めていたところ、これが和解により決着した」というものでした。

ここでの面白さはいくつかありますが、弁理士としては、以下が興味ありました。

「どんな権利主張をして差し止めようと思ったのか」ということ、特に、「著作権は主張できるの?」ということです。

まず、「建築物」が著作権の対象になるか(著作物になるか)?というと、なるんですね。「この法律に言う著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。(この中の例示で)建築物の著作物」(著作権法第10条)。

で、次に、問題なのが、著作権の有効期間なんですね。著作権法によると「著作権は、著作者の死後70年を経過するまでの間、存続する」等と規定されています(著作権法51条等)。年数については最近改正があったので厳密には違うのですが、いずれにしても、11世紀頃に建立されたものですので、そもそも著作権法が無かった時代でもあり、仮に認めたとしても、とっくに著作権は切れているんですよね(ここでも面白い観点があるのですが、別の機会に)。

じゃあ、別の権利だよね、ということになり、弁理士の直接の範疇からは離れ始めてしまうのでした(明日に続く)。

ゆるキャラの制度設計のご注意!

「ゆるキャラ」を作って活性化したい!!
特に、デザインを公募したいと考えている方は、事前にご相談を!!!

ゆるキャラは主として「財産権としての著作権」(加えて商標権)で保護されます。
そして、この「財産権としての著作権」はデザイナーの方から譲渡可能です。

しかし!!!

ゆるキャラに関連して、譲渡できない権利があります。これが、「著作者人格権」です。

この著作者人格権は譲ることができず、必ず、デザイナーに残ります。
この著作者人格権は、ざっくりいうと「勝手に改変させない権利」と言えます。
デザイナーにとって創ったゆるキャラは自分の子供なので、「私の子供を侮辱するな」というようなものです。

最近、
・ゆるきゃら「ひこにゃん」で、彦根市とデザイナーである「もへろん」さんと争った件、
・紅白歌合戦でうたわれた「おふくろさん」が、作詞者の意思を曲げてしまったため、歌えなくなってしまった件
等は新聞でも有名になった話題だったと思います。探せばもっとあると思います。

つまり、財産としての著作権はもらえても、著作者人格権はもらえないのです。

このため、
・どの様に契約等を取り扱えばよいか?といった法律的な観点はもちろん、
・どうすれば揉めないようにできるのか?といった人情・情緒的な観点、
・募集などを含め、どのような手順を踏めばよいのか?といった手続的な観点

行政のゆるキャラを多数お手伝いをした経験を踏まえてお手伝いできます。

ある程度進んでしまった段階では遅い場合もありえますので、

その際には、是非、事前にご相談を!!!