商品の名前や、メニュー名等のサービスの名前、店名等について、
「商標を取らなくても、自分が先に使っているのだから大丈夫」と思っていませんか?
これは実は危険をはらんでいることを理解しておいてください。
まず、
商標権は、先にとったもの勝ちです!!!
どちらが先に使っていたかなんて、最初の段階で問題とはならないのです!!!
権利者と無権利者、この時点でまず圧倒的に不利です。
「私が先に使っていたのに、後から権利化した者が権利を行使するのはずるい!!」と思いますよね。
感情的にはそうなんです。そうなんです。
でも、先に使っていたのであれば、そのとき商標権を取得して権利保護をしておくべきだった。
でも、そうしなかった。
「権利の上に眠るものは保護に値せず」ということなのです。
つまり、自分は取らないとしても、他人がとる可能性がある。
他人がとってしまった場合、侵害として差し止められる、更には損害賠償を取られてしまう場合もある。
これが「危険をはらんでいる」ということなのです。
しかし!!
この場合に、完全に救いがないわけではありません!!
これに対しては、以下のような対抗策を取ることができます。
(1)商標権を消滅させる!!
(2)先使用権(せんしようけん)を主張する!!
これらを具体的に説明しますね。
(1)商標権を消滅させる!!
商標権は、一度登録になっても、一定の条件を満たせば消滅させることができます。
この条件は、商標法という法律で規定されています。
今回の場合、例えば以下の条件が有効です。
(A)権利の取得に不正の目的があった場合
(B)後の出願時点において、既に広く知られている(周知の)商標だった場合
商標権を消滅させてしまえば、侵害だという根拠がなくなりますので、問題解決です!!
(A)は、なんとなくわかりますよね。
「あ、あいつ、商標権を取っていない。そうだ、商標権を取って、あいつから使用料を取ってやろう」なんて、明らかに悪い目的(不正の目的)がありますよね。
こんなときは、当然、権利を消滅させるべきですよね。
ですので、消滅の理由になります。
(B)は、既に広く知られているような商標は、たとえ上記のような不正な目的がなくても、登録にすべきでないな、ということは感覚的にわかりますよね。公平の観点や、公正な取引状態を維持する観点です。
ですので、これも消滅の理由になります。
一般的には、自分の使っている商品名等がすでに、後の商標の出願時点で周知だったということを主張することになると思います。
でも、これらにも問題はあります。
例えば(A)「不正の目的」ってどうやって証明します? 相手が「知らなかった」としらを切った場合、
知っていたこと、不正の目的があったことを、「消滅させようとしている側」が証明しなければなりません。
その証拠を集めること自体、そう簡単ではないんです!!
また(B)では、「広く知られている」ってどの程度を言うのか?ということが問題になります。
これは非常に曖昧ですが、少なくとも、単に「売っていたという事実」だけでは全く足りないのです!!
これは本当に資料を集めるのが大変なのです!! 昔の資料なんて時間がたったら捨ててしまいますから!!
その手間を考えるのであれば、出願しておいた方がよっぽど経済的です!!!
更に、お金を取る気満々の人に、売上額を見せて「うちはこんなに売り上げがあったんだから周知だった」って言えますか?
そう言ってしまったら、「では、その売り上げの10%が損害賠償額だ」って言われるのがオチです。
カモがネギしょって、出汁とともに鍋の中に入っている感満載です!!!
そして、そもそも、権利を消滅させるためには、特許庁にそれなりの手続きをしなければなりません。
その額は、商標権取得のための費用の数倍は軽くかかります!!
そして、次に、(2)は、実は上記(B)と同じようなものです。
先使用権とは、後の出願時点において、既に周知の商標だった場合、その範囲でその商標の使用を使い続けることができる、という権利です。ざっくりですが。
仮に、上記(B)の要件で権利を消滅できないとしても、「広く知られている」のであれば、権利を消滅させなくても、使用を継続させておいてあげよう、という趣旨です。公平ですよね?
でも、この場合でも、上記(B)で言った通り、
お金を取る気満々の人に、「うちはこんなに売り上げがあったんだから周知だった」って言えますか?
そう言ってしまったら、「では、その売り上げの10%が損害賠償額だ」って言われるのがオチです。
飛んで火に入る夏の虫状態です。無視(虫)できませんが。
私が担当したケースでも、資料を準備したものの、怖くて結局出せませんでした。
出すなら、裁判所で出すべきです。つまり「訴訟」ですね!!
訴訟の場合、100万円以上は軽くかかり、出願するための費用の何倍が必要でしょう??
以上を考えると、保険として商標を出しておいた方が良いと思います。
ただ、気を付けなければならないのは、
全てに商標権を取得していたら費用にきりがない!!ということです。
したがって、本当に譲れないネーミング(店名等)に絞って、上記の費用対効果を考える、これが重要です。
この観点は、弁理士とご相談の上ご検討ください。
長くなってしまいましたが、机上の空論と現実論、どちらが勝つのか重要か、費用対効果、という話です。