内的不可と外的付加

 特許請求の範囲の補正で「内的不可」と「外的付加」という言葉があります。実務的には死語になっている可能性もありますが、私の中ではまだまだ現役のため一つ記事を。

 特許請求の範囲、より具体的に請求項では、「発明特定事項」という概念が存在します。

 発明特定事項とは「発明を特定するために必要な事項」を言います。そのままじゃないか、と言われると思いますが、そうですね。そのとおりです。

 請求項は、発明特定事項を具体的に記載する必要があります。請求項の記載の方法は、人によって大きく異なりますので、なかなか一般的に記載できないですが下記のような構成が一般的です。

 「Aと、Bと、Cと、を有する○○装置。」

 上記の例で、「A」「B」「C」が発明特定事項と呼べますね。ただ、通常の請求項は、「A」「B」「C」が非常に長い単語になっているのでわかりにくいんです。また、人によっては、わかりやすくするために発明特定事項ごとに改行することもあります。

 具体的には、例えば、椅子の特許であれば、

 「座板と、前記座板を支持する脚と、前記座板に固定される背もたれ板と、を有する椅子。」のように表現されることがあり、この場合、(A)が座板、(B)が脚、(C)が背もたれ板、ということになります。

椅子

  ここで、上記の請求項に拒絶理由が来て、下記のような補正を行った場合が、「外的付加」となります。

「座板と、前記座板を支持する脚と、前記座板に固定される背もたれ板と、前記座板に固定される肘掛けと、を有する椅子。」

肘掛け(D)を追加

 つまり、「肘掛け」が新しく追加された発明特定事項であり、新しい(D)と言えますね。このように新しく発明特定事項を追加することを「外的付加」と呼びます。

 一方で、下記のような補正をした場合はどうなるでしょうか。

 「座板と、前記座板を支持する『四本の』脚と、前記座板に固定される背もたれ板と、前記座板に固定される肘掛けと、を有する椅子。」

(C)「四本の脚」とした例

これは、既に存在している「脚」という発明特定事項を減縮する補正と言えます。つまり、既にある発明特定事項を狭める補正を「内的付加」と呼びます。

 最初の拒絶理由通知の際は、外的付加の補正も内的付加の補正も可能ですが、最後の拒絶理由通知の際は「内的付加」だけが許されることになります(特許法第17条の2第5項)。拒絶理由通知の種類によって補正の範囲が異なるので、この辺りの認識は極めて重要です。

 ただ、最後の拒絶理由通知でも、上記の回避の方法は実務的なテクニックとしていくつかあります。この辺りは別の機会に。

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