手続補正指令と特許請求の範囲

 一般化した実務Tipsとして投稿。

 手続補正を提出したものの、請求項に不備があり、補正指令がかかることが稀にあります。

 実はこの場合、「特許請求の範囲の補正はできるのか問題」が発生します。

 というのも、特許法第17条の2の規定では、特許請求の範囲については、「特許法第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる」旨の記載があり、この「次に掲げる場合」とは、「拒絶理由通知がなされたとき」程度に限定されているのです。

 すなわち、「補正指令」は拒絶理由には該当しないため、特許法第17条の2に該当しない、つまり特許請求の範囲について補正できる場合に該当しないのではないか、と考えられるのです。

 ただ、このような場合でも、補正指令で「特許請求の範囲を補正しろ」とある場合は、粛々と提出できるはずなのですが、少し違和感が残ってしまいます。

 さらに、この場合、意見書も並行して提出することができるのか、という問題もあります。意見書についても、特許法第50条で「審査官は~相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない」旨があり、補正指令が来たとき、意見書も提出できる期間ではないのではないかと不安になります。。。まあ上申書の提出でもよいのかもしれませんがね。

 ただ、結果としては、いずれも提出でき、審査官が認め、登録になってしまえば、特許の無効理由(特許法123条等)には該当しないので、審査官が認めてくれさえすれば無問題。実際の案件は事なきを得て登録となっています。

 ……実は、この辺りは、実は実務的には大変重要なこと。

 特許では、登録になったとしても無効審判の請求がなされることがありますが、その理由に「補正要件違反」があったりします。つまり、「補正で許されていないことを補正してしまったから無効である」ということがあるのです。

 上記の場合、特許法上、特許請求の範囲が補正ができる期間でないのに補正をしてしまったので無効である、と言われてしまわないか、といった疑問があるということです。

 しかしご安心。この時期的な違反は、無効審判でいう補正要件違反ではありません。つまり、(審査官が見落としてしまった場合)無効理由にはなりません。

 この辺りは、テクニック的なところがありますので、また別の機会に。

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