紙媒体とソフトェア

 ノートや手帳の紙媒体について権利化の可能性について発明相談を受けることがたまにあるところ、先日のサロンで、ソフトウェア関連発明との違いが話題になったので自分のメモとして書いておきます。

 ノートや手帳等の紙媒体の発明で、その構造自体に特徴があるものは、その構造による技術的効果を主張して権利化を図ることができます。例えば、水平開きノート(特許第5743362号)等がその典型例ですね。

 しかし、ノートや手帳において、「罫線や枠の記載自体」に特徴がある場合はどうなると思いますか?

(1)罫線や枠の配置によって、技術的な効果が表れる場合はどうなるかというと、成立します。例えば、罫線の特徴的な記載によって、「視線誘導によって集中力が高まる」といった効果があると成立します。この例は、例えば特許6934152号等がその例です。

(2)これに対し、罫線や枠の配置によって、「ビジネス戦略を立てやすくなる」等のように、技術的な効果とは言えない場合はどうなるか、というと、「拒絶される可能性が高い」と言えます。これは、技術的な効果ではなく、単なる情報の提供に過ぎないから(それ以外の構造は同じであり、特許性がない)、ということになります。

 すなわち、紙媒体の特許では、厳密に従前の解釈が存在するようです。

 

 一方で、ソフトウェア(プログラム)発明の場合はどうなるかというと、現状、経験的に上記(1)(2)のいずれにおいても成立する可能性が高いと感じています。

 具体的な有名な例として、スクウェアのファイナルファンタジーのタイムゲージに関する特許(特許第2794230号)を挙げることができるかなと思います。

 これは、戦闘中にキャラクタごとにタイムゲージを表示させ、このタイムゲージが徐々に満たされていき一杯までたまったら攻撃できるようにすることで、戦闘中にキャラクタごとに独立した行動が可能となり、ゲームに従来時間の概念を導入した、というものです。効果は、「ゲームの臨場感を高める」であって、「技術的な効果」とはなかなか言いにくいですよね。

 最近このような実務は進み、最近では、店舗においてアルバイト等のシフト計画を立てるプログラムでも成立するようになっています(例えば特許第6621878号)。ここまでくると効果は「より効率的な人員配置を可能として経営効率向上に寄与する」となっています。

 こう考えていくと、そろそろ、紙媒体においても、上記(2)の成立を認めてもよい時期が来ているのではないかと考えている次第です。ただ、ソフトウェアに関して上記(2)が見逃されている的な実務で認められているのであれば、拒絶の傾向が強くなってしまう可能性があるので、藪蛇にならないように注意が必要ですね。

 ちなみに、上記の紙媒体の上記(1)の案件、バイトのシフト計画のプログラムの例については、いずれも私が代理させていただいた案件です。また、紙媒体の上記(2)の案件で拒絶された案件は、中途受任で頑張ったことがあります。

 ただ、成立するかしないかは結局のところ、出願して初めて結果がわかるものですので、このようなものでもぜひご相談ください。というアピールでした。

 

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