特許出願をしたときに通知される拒絶理由の中に「発明の単一性」というのがあります。
これは、一つの特許出願に、異なる発明群が記載されている場合に、審査官にとっては異なる観点でたくさんの調査や審査をしなければならなくなるため、一つの発明の群を選択しなさい、という拒絶理由です。審査官の負担軽減のためですね。
確かに、冷蔵庫と洗濯機の発明を一つの明細書に書いた場合は、全く違う審査をしなければなりませんよね。
でも実際、冷蔵庫と洗濯機のような発明を一つの出願に入れ込んでしまうということは稀で、大体はこんな極端なことはしません。
しかし、この拒絶理由って、結構通知されてしまうんです。
その例はいくつか挙げられるのですが、その理由の一つとして挙げられるのが「新規性がない場合」です。
今日はこの観点でのお話。。。愚痴ですが。
発明の単一性って何を根拠に通知されるのかというと、特許請求の範囲に記載された請求項の発明同士の「特別な技術的特徴」が共通するかどうか、というのを見るんですね。
特別な技術的特徴って、例えば、特許請求の範囲が下記のようなものであったとします。
【パターン1】
請求項1:冷凍レベル調整機構を備えた冷蔵庫。
請求項2:冷凍レベル調整機構と、野菜トレイと、を備えた冷蔵庫
これらの共通する部分はどこだと思いますか?
そうです。冷蔵庫であることと、「冷凍レベル調整機構」が共通します。
簡単に言うとこの「冷凍レベル調整機構」が「共通する特別な技術的特徴」と言えます。
算数でいう、「最大公約数」のようなイメージで考えるとよいとわかりやすいかもしれませんね。
最大公約数が共通すれば、発明の単一性があり、共通しなければ発明の単一性がない、と言えます。
ですので、例えば下記の例であれば、単一性がないということはわかりやすいですね。このレベルでも、単一性がない、と言われてしまうのです。
【パターン2】
請求項1:冷凍レベル調整機構を備えた冷蔵庫。
請求項2:野菜トレイと、を備えた冷蔵庫
しかし、上記の【パターン1】でも、単一性がないといわれてしまう場合があります。
これはどのような場合かというと、「請求項1に新規性がない場合」です。
ここから少し難しくなりますが、「特別な技術的特徴」とは、「先行技術に対する技術上の意義」が必要と言われています。つまり、審査官が探した先行技術に対して何らかの新しさや有用性が必要になってくるということです。
で、「新規性がない」ということは、「技術上の意義」がない、すなわち、「特別な技術的特徴が『ない』」ということになります。
上記【パターン1】の例で、例えば、「冷凍レベル調整機構」がすでに審査官が発見した文献に記載されていて、新規性がないとします。すると、請求項1には「特別な技術的な特徴」がない、すなわち「0」ということになりますよね。
するとどうなるでしょうか。
自動的に、「請求項2と共通する技術的特徴がない」ということになります。
なので、発明の単一性はない、という拒絶理由が来る場合があります。
算数の場合、どんなに小さくても「1」が最大公約数となりますが、特許出願の場合は0ですので、公約数がないということなのですね。考えてみるとすごい理屈です。
このため、新規性がない請求項があればこれを根拠に発明の単一性の拒絶理由を通知できることになります。
新規性と発明の単一性は実はかなりリンクしているということなんですね。
私が審査官だったら、新規性のない請求項を見つけたら後は発明の単一性がないから審査しません、という拒絶理由を打ちますね。
もちろん、追加的な先行技術調査や判断を必要とせず審査を行うことが可能な発明や、発明をまとめて審査を行うことが効率的な場合は審査をしなければなりませんけどね。