今日は論文盗用の記事があったのでその記事を。
学生の修士論文と表現7割同じ 「盗用」の教授に3年間の研修義務 関西大学は11月30日、60代の男性教授の論文1本で盗用を認定した、と発表した。 教授だけの名前で投稿した論文の文章の70%が、教授が主査を務めた学生の修士論文の表現と同じだったという。 今後、大学の懲戒規定に基づき、教授への処分を決める。 関西大によると、論文は2020年に大学のウェブ上の論文集に掲載された。 今年3月に研究不正に関する窓口に「論文の内容が、教授が主査を務めた修了生の修士論文の内容と酷似している」という趣旨の匿名の告発があり、大学の調査委員会が調べていた。 聞き取りに対し、教授は「非常に良い論文だったが、論文の著者が自分の名前で発表する意向がないということだったので、自分の単著として公表して形に残したかった」などと説明したという。 通常、修士論文は公表されない。原稿の段階では修了生との共同研究と注記していたが、最終段階で消したとしている。 教授は修了生に口頭で許可を得たとしている。ただ、調査委は、論文は修了生との共著とするべきで、それが無理でも修了生の論文を元にしていることを適切に表示するべきだったと判断。注記を消した上で、教授単独の論文として投稿したことは、故意に適切な表示をせず「盗用」にあたると認定した。 関西大は論文の取り下げを教授に勧告したが、応じるかどうかの意思表示がなく、現在も掲載されている。今後の取り扱いについては検討中だという。懲戒処分とは別に、教授に対して今後3年間、研究倫理研修を毎年受講することを義務づけ、従わない場合は研究費の申請、使用を認めないとした。 引用:朝日新聞デジタル2021/11/30(火) URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/59dbef61492853ec55248ef4e7a141fbf1bc0ab8 |
今回のケースは、いくつかの場合分けが考えられます。
まず、論文の「教授が『主査』を務めた」とあるだけで、その教授が指導教員であったかどうかがわかりません。
(1)その主査の教授が、指導教員でも何でもなかった教授の場合であれば、確かに「盗用」で処理される案件。ニュース通りですね。
一方、(2)その主査の教授が指導教員であった場合は、「盗用」といってよいのか疑問です。
ここから下は主に上記(2)である場合の話。
卒業した学生の残した卒業論文を、残った指導教員が学術論文としてまとめることはあり得ることです。また、この際、研究に関与した指導教員がまとめること自体に大きな問題はなく、事後的でも共著とすることで一応解決できます。
また、特に、修士論文や卒業論文では、教員が関与しないということはなく、修士論文等の表紙に学生の名前しか記載がなくとも、実質的にその指導教員は内容に非常に大きく関与しています。 なぜなら、論文を完成させるためにかなりの手入れや議論をして一緒に考えるのが通常であるため。この場合、共同著作物となる可能性は極めて高いと考えます。ただ、建前上、共著としてしまうと学生の論文としての評価ではなくなってしまうので。。。
つまり、(2)の場合、実際には教授も研究に関与していた指導教員であれば、共同著作者であって、「盗用」という表現はふさわしくなく、どちらかというと、共同著作物であるにもかかわらず、単独のものであったという表記にしたことや同一性を損なわせた「著作者人格権侵害」の問題と思います。なお、著作者人格権侵害は親告罪のためその本人でなければダメなはずですが、倫理規定違反ということなんでしょうね。
もちろん、上記(1)のように指導教員でもない、全く関係のない教員であれば確かに「盗用」に該当しますが。。。
この点に関し、問題となっている教員は「主査を務めた」とありますので、単に論文を査読しただけなのか、指導教員であったのかはわからず、前者であったら明らかに盗用になるのですが、後者の場合は厳しすぎる表現かと。この点が気になる記事ではあります。
なおこのニュース、大学からの発表もありました。ここでも「主査」とあるだけで指導教員とは記載がなかったので、指導教員でなければ、わざわざ違う教員を主査に充てたんですかね。ただ、そうであれば、この学生の指導教員は、今どんなことを考えているのかな?(告発者だったのかな?)と考えたりします。