新型コロナウイルス感染症に対して、世界中でその治療薬開発が行われています。
ところで、ニュースで「アビガン(一般名:ファビピラビル)」が新型コロナに聞くのでは?という話があったと思います。今日はこのお話。
ファビピラビルは、抗インフルエンザウイルス剤として開発された物質であり、富山大学と富山化学工業が共同開発した薬であり、すでに特許として成立しています(特許第4355592号「抗ウイルス剤」現特許権者:富士フイルム富山化学株式会社)。
しかしながら、中国が中国国内だけでなく日本においてもファビピラビルに関する用途発明を特許出願がなされていることがわかっています特願2020-173044)。
え?そんなことってあるの? と思うと思いますが、残念ながらありうるんです。
用途発明とは、たとえ既に知られた物質でも、その新たな用途(効果)を発見した場合、その用途に限定した形であれば、特許出願を行い、他の特許要件を満たす限りにおいて成立させてしまうことができるのです。
つまり、今まで新型コロナウイルスなんて存在していなかったのですから、実証データさえあれば「新たな用途の発見」という主張はそう難しくはなさそうですよね?
このブログの執筆時現在、日本の上記特許出願については、特許庁から拒絶理由が通知されているようですが、この結末について非常に興味があります。
もし仮に、中国の特許出願が成立した場合、 基本特許の権利者である富士フイルム富士化学であっても、新型コロナウイルスの治療薬として出荷しようとする場合は、中国人民解放軍(のアカデミー)に特許料の支払いをしなければならなくなってしまいます。。。