所長に起きた出来事や思ったことをつづります
所長つれづれ
今日のできごと
円安①
最近の円安がすごいことになっていますね。
すごく細かいことなのかもしれませんが、助成金や補助金で注意しなければならないこと、それは、レートの変動です。
当たり前だと思うのですが、今日は、意外に気を付けていないと面倒なことになる、というお話。
まず、助成金や補助金は日本円で行われます。また、助成金や補助金は、申請時にその上限の額を定めてから申請する必要があるものが多いです。
で、外国から製品を買う場合や、外国に特許出願などを行う場合、ドルやユーロ等の外貨で送金を行うのですが、この際日本円から外貨に変換してから送金します。
つまり、助成金や補助金を申請する場合で、外国送金を行う可能性がある場合、送金時のレートを予想してその換算後の日本円の額を見積額として申請します。
ここまで書くとなんとなくわかると思いますが、「助成金申請時の為替のレートと、実際の送金時の為替のレートのずれが大きい場合、特に、申請時よりも送金時に大幅に円安に振れてしまったらどうなるのか?」という問題が生じるのです。
結論からすると、見積時に上限が決まってしまうので、「超えた分は助成や補助を受けられない可能性がある。」ということです。注意しましょう。
実際、私の場合、円安に振れた場合を想定してレートを円安にして計算し、特に今年は円安側に振れても大丈夫なように計算したのですが、今年は結構ギリギリでしたね。
ただ、今年はかなり特殊な状況ですので、変更修正等が受け入れられやすいのではないかな、と思いますが、その修正申告も手間ですので、超えないには越したことがないですね。
なお、助成金や補助金は結局のところ、実際の送金の証明書を提出し、実費精算をするので、助成金や補助金による費用支援を受ける出願の場合、円安に設定して見積もりを高くしたからと言って、見積額と実際に送金した額との差額が弁理士に収入として入ることはないです(少なくとも私は)。
ただ、助成金を受けない場合は、その実費の証明書が必要ないはずなので、どうなるのか? ここが、弁理士によって異なる対応になる、ということです。
請求書が外国送金分を「立替金」といっているのであれば、きちんと送金の証明を求めることも重要ですよ、というお話です。
200,000km
自動車で移動することが多いので、みるみる走行距離がたまっていくのですが、なんと7年目にして20万キロメートルに達しました。
1年間に3万キロ程度走っているので、順当といえば順当でした。
買い替えなければというプレッシャーがすごいですが、まだいけます!
©の由来
ところで、ホームページや広告等様々なメディアで「©」のマークを見たことはありませんか?
例えば、Yahoo Japan!のHPの下には
「©Yahoo Japan」のような記載があります。
これって何でしょうか?
実は、著作権を主張しているマークなんです。
で、その根拠は「万国著作権条約」というものです。
万国著作権条約というのは、1955年に発効した国際条約なんです。
万国著作権条約の第3条第1項には、下記のように記載されています。
| 締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合には、この条約に基づいて保護を受ける著作物であつて自国外で最初に発行されかつその著作者が自国民でないものにつき、著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに©の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。©の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げなければならない。 |
なので、この規定に従って表記することになります。
具体的には、「©記号+著作権者の名前+最初の発行の年」という表記が必要になる、ということですね。
では、なぜこのような表記をしなければならないのかというところですが、
実は、記載する必要は必ずしもないのです!!!
なぜかというと、この前段に書いてあります。
改めて読んでみると、「締約国は、自国の法令に基づき著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国における製造若しくは発行等の方式に従うことを要求する場合」に、
「その最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに©の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。」とあります。
ちょっと難しくなりますが、ざっくりいうと、「著作権の保護のために文化庁等への登録をしなければならない」といったような「方式主義を採用している国」の場合、©が上記の所定の表記となっていれば、保護する必要がある、ということです。
一方、日本では、著作権の権利発生要件に登録を要件としていない「無方式主義」を採用しているため、©を付する必要がそもそもないのです。
ただ、確かに、方式主義を採用する他国でも著作権を保護しようとするのであれば必要になるかもしれませんが、現在日本と関連の深い国のほとんどは無方式主義を採用し、ベルヌ条約に加盟しているため、実質的に必要がないといえます。
とはいえ、©がついていると、「私の著作権ですよ!!」という意思表示が明確に示されていますので、この意味であれば十分意味がある、とは言えますね。
確かに私もつけるかつけないか、、、、というと、・・・・つけます。
©マークの余談でした。
なお、ベルヌ条約についてはまた別の機会にでもお話ししますね。
SWOT分析①
今日は知的財産とは少し離れるのですが、SWOT分析の話。
SWOT分析とは、企業の内部環境、外部環境を分析するフレームワーク(枠組み)のことです。
より具体的には下記のS(Strengths:強味),W(Weaknesses:弱み),O(Opportunities:機会),T(Threats:脅威)の四つを検討することで、経営戦略を策定しましょう、ということです。

SWOT分析が重要な点は、四つの観点がわかりやすく、埋めやすくて使いやすいだけでなく、非常に有名なフレームワークであるため、他者に自分の事業を説明する際にも有用だということです。
助成金や補助金ビジネスコンペでの申請においては、自分の事業がいかに他社の事業より優れているのかを表現し、今後の事業展開の有望性を主張することが重要です。
その主張を客観的に見せる根拠づけるものとして、このSWOT分析を用いることが重要になってきます。
ただ、気を付けなければならないのは、あくまで企業戦略策定という「目的」を達成するための「手段」ということです。
手段が目的化してしまうと本末転倒になりますので、その点が注意です。
作って満足してしまうと、これで終わってしまいます。そのあと、どういった戦略を立てていくことが重要か、ということが大切です。
そのため、SWTO分析をもう一歩進めるクロス分析(クロスSWTO分析)があります。この点についてはまた別の日に説明します。
音楽教室と著作権料
JASRACと音楽教室事業者(音楽教室を守る会)との裁判について、最高裁が上告を棄却したというニュースがあったので、今日はこのお話。
音楽教室訴訟に決着「生徒演奏に著作権料不要」 JASRAC「主張が認められず残念」(Impress Watch 2022/10/25記事より引用)
ことの発端は、2017年にJASRACが音楽教室から音楽著作権料の徴収を始めると発表したことによります。
これに対し、音楽教室事業者らは反発。裁判までもつれ込んで、やっと決着がついたというお話。
ここで、「音楽教室は著作権料を『一切』支払っていなかったのか?」と思われるかもしれませんが、これは誤解。
今回の問題は、著作権の特徴的な性質が、利害として大きくクローズアップされた例であり、セミナーをやっていると非常に説明しやすい例として重宝しています。個人的な見解は別にして。。。
著作権は、実は、音楽(著作物)の利用する行為ごとに権利が発生しています。つまり、著作権は、行為ごとに認められた権利の集合になっているのです。
著作権は、例えば、他人の音楽を演奏する権利である「演奏権」、音楽の楽譜をコピーする権利である「複製権」といった具合に、著作権という制度は、複数の権利があり、そのそれぞれの権利を使いたいのであれば、著作権者にそれぞれ許諾を受けなければなりません。めんどくさいと思いますよね。でも、法律上はそうなっているのです。
具体的には、子供を音楽教室に入れるとき、練習する楽曲が印刷された「教本」を買いますよね。「印刷」ですので複製されている、ということです。
実はこのとき、音楽教室は買ってもらった「教本」に記載された楽譜について、「複製権」の許諾を作曲者から貰っているため、まともな音楽教室は、作曲者にこの分の著作権料を(JASRAC経由で)支払っています。
ただ、音楽教室で買った楽譜を見るだけでは上達しないので、当然、先生からのレッスンを受けるために、先生の前で弾きますよね。これが子供の演奏であり「演奏権」の無断使用になっていたということ(JARACの主張①)です。
また、先生もお手本を示すために生徒の前で演奏しますので、これも「演奏権」の無断使用であったということ(JASRACの主張②)です。
第一審の東京地裁では、JASRACの主張をすべて認め、子供の演奏も、先生の演奏も、無断使用であるため、演奏権についての料金を支払うべき、と判断しました。
一方で、控訴審である知財高裁では、上記JASRACの主張①はないだろうということでJASRACの主張②を認め、「先生の分の演奏は演奏権料の支払いをしなさい」ということとなり、最高裁でもそのように判断した、ということになります。
この結果、どうなるかというと、今までは、”例えば” レッスンの教本が1000円で、著作権料(複製権)が3%だった場合、30円をJASRACに支払うだけでよかったのですが、
今回、演奏権が認められたことにより、”例えば”毎月8000円のレッスン料にも、著作権料が発生するようになるため、支払いが発生することになる、ということです。
2017年の段階では、生徒の演奏権分と先生の演奏分で2.5%と主張しているようでしたので、先生分のみ支払うということになれば、仮に半分程度の1%としても、毎月80円(年間960円)の著作権料が発生することになります。
この額の差は非常に大きいですね。これが、JARACと音楽教室側とで争いになった原因です。
この結論に基づいて、今後JARACと音楽教室との間で取り交わされる戦略は下記の通りかと考えてみます(あくまで個人的な感想です)。
①JARAC側
著作権料率を可能な限り当初の主張の2.5%に近づける(裁判における主張に矛盾しない範囲で)。
たとえば、先生の演奏のウェイトがいかに大きかったのかを強く主張することで割合を大きくすることが考えられます。
②音楽教室側
著作権料を可能な限り低くできるよう、JASRAC管理楽曲を外す。例えば、著作権の切れたクラシックの曲だけにしたり、JASRACに管理を委託された楽曲を除外する。
あと細かな点はいくつかあるのですが、複雑になりすぎるので省略。
ただ、いえることは、レッスン料の値上げをしないのであれば、それは先生と音楽教室の減収に反映される(400万円程度の収入であれば、1%~2%とすると4万円~8万円程度の減収)ことになるため、レッスン料の値上げを考えざるを得ないのは確実だろうな、ということですし、教本に掲載される楽曲の選択も大きく練り直される可能性がある、ということです。