こだま国際特許商標事務所

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2021年

知財ミックス戦略とは

 最近の流行している言葉に「知財ミックス戦略」なる言葉があります。

 調べてみると、
一つの製品やサービスを、特許、実用新案、意匠、商標等により多面的に保護する戦略
ということらしいです。

 技術的な面は特許、デザイン的な面は意匠、商品名は商標、製造技術はノウハウ等ということでしょうか。

 ・・・言葉を作られた方、本当に申し訳ありません。当たり前すぎて。。。。。

 何かしらの特殊なフレームワークに落としてもらえると大変助かりますが。私が知らないだけなのかも?

オプジーボ

オプジーボに関して、小野薬品と本庶佑先生が和解したそうです。
今日はこの話題を。

オプジーボ特許料訴訟で和解成立 ノーベル賞・本庶佑氏と小野薬品

 がん免疫治療薬「オプジーボ」を巡り、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)・京都大特別教授が小野薬品工業(大阪市)に特許使用料の分配金262億円の支払いを求めた訴訟は12日、大阪地裁(谷有恒裁判長)で和解が成立した。京大が明らかにした。
 地裁が9月に和解案(内容は非公表)を提示し、双方が協議を続けていた。
 訴状などによると、本庶氏が求めているのは米製薬会社「メルク」が小野薬品に支払う特許使用料の一部。本庶氏側は小野薬品に支払われた使用料の40%分を受け取る約束があったが、実際は1%しか支払われていないと主張した。
 一方、小野薬品側は「本庶氏に40%分の支払いを提案したことはあるが断られた経緯があり、契約は成立しなかった」などと反論していた

引用先:毎日新聞2021/11/12
URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/e6955d04179a6df39248bd76edd72404df5dded3

 なんとなくわかったような、わからないような。
 ここで経緯の確認。ただし、インターネットで調べた範囲。

 なおここで皆さん気になると思うのですが薬の名前「キイトルーダ」。
薬が「効いとるだ!」って感じですね。。。というのは置いといて。

2003年07月 小野薬品工業と(以下「小野薬品」)と本庶先生オプジーボ特許出願
2006年 小野薬品と本庶先生、売上に応じた使用料を受け取る契約を締結
  第三者から実施料を得た場合1%(自社実施0.5%)の対価を本庶先生に支払う旨規定
2009年11月 特許4409430号成立
2011年 本庶先生から小野薬品にロイヤリティの見直し依頼あり。契約を根拠に拒否
2012年12月 特許5159730号成立
2014年 メルク社に対し「キイトルーダ」が小野薬品工業の特許を侵害しているとして提訴
2014年09月 本庶先生と小野薬品相良社長が面談。小野薬品から和解金の40%の受取の提案あり。
   (しかし「はした金」として本庶先生は拒否)
2017年01月 小野薬品にメルクが約710億円を支払う内容で和解。
2018年10月 本庶先生ノーベル賞受賞
2020年06月 本庶先生小野薬品に262億円の配分を求める訴訟を提訴
2020年11月 本庶記念基金設立
2021年09月 第2回口頭弁論
2021年11月 和解(京大の基金に230億円,本庶氏に50億円との報道あり)

 経緯を見てみるとなるほどという感じです。

(1)まず、特許が成立する前(2006年)に、本庶先生と小野薬品は実施料について1%で合意したようです。
 特許として成立していない状況や、どの程度の有効性があるのかが不明である状態であれば、確かにこのくらいの料率は見たことはありますが、さすがに1%は低いかな、とは感じます。原価割れの薬?って感じの料率ですね。

(2)ただ、ここで気を付けなければならないのは、オプジーボ(PD-1抗体)が癌治療剤として承認されるためには、負担の大きな臨床実験やそのための費用が莫大にかかる、ということです。「1%なんて低すぎる!」と言ってしまうのは早計かもです。
 発見したという事実は極めて大きいですが、薬として認可を受けるためにはとてつもない労力がかかることを忘れてはならず、そのことに対する小野薬品の寄与は無視してはならないところです。
 この辺りは多分、他の文献やこれからもう少し調べると妥当だったかわかると思うのですが、これはまた別の機会に。

(3)次に、2011年に本庶先生からロイヤリティ(実施料率)変更の申し込みがあったと。
 特許として成立したことや、有効性がわかってきたところで、見直しの依頼があったのでしょうね。
 で、小野薬品は契約を盾に断ったと。なるほど。
 個人の感覚で申し訳ありませんが、事情やその有効性がより明らかになったことで、確かに本庶先生の主張はありだと思います。
 一方で、企業としては契約している以上変えることができないと考えるのも普通に理解できます。
 なお、こういうときは、出願のときに「成立したら料率を再検討」とか「特別に利益が生じた場合には料率を再検討」のような条項をおまじないのように入れることを試みます。ただ、この条項は、あまり認めてもらえないことが多かった(むしろ殆ど)です。。。

(4)普通であればこれで終わってしまうところですが、転機がありました。
 2014年の小野薬品とメルクとの訴訟です。
 メルクとの訴訟で本庶先生の力が必要になりました。
 本庶先生の今までのうっぷんがここで晴らされるのか?といったところですね。

(5)そしてついに2014年、小野薬品から「40%」という条件を引き出せました。
 これについては裁判でも小野薬品の社長も認めています。
 個人的には裁判において、ここはすごい判断だったと思います。
 この発言を認めることで、元の契約があったとしても結構に不利になりますからね。
 通常、大きな企業は交渉において、決定権を有する者を直接交渉の場に出すことは少ないです。なぜなら、その場ですぐに判断を迫られ、それがすぐに会社としての決定になってしまうので、時間を稼いで念のため確認する必要があるためです(権限がない者であれば、言ってしまったとしても表見代理はともかく「その担当者が勝手に言ったようだが会社の決定ではない」ということが言えますので)。
 ただ、訴訟という状況と、何回も担当者から本庶先生に連絡してもらちが明かなかったということで、社長レベルでないとダメ、と判断したのでしょうが。
 書面で証拠が残ってしまっていたので認めざるを得なかったのでしょうかね?
 でも、本庶先生はこれを「はした金」といって突っぱねてしまいました。えっ?

(6)本庶先生が突っぱねたことにより、小野薬品は元の契約のまま履行しました。
 つまり、メルクからの710億円の和解金の1%でよいという解釈をしたわけです。
 会社としては「社長が言ったから」というだけで正式な契約もないのに40%(260億円以上)をポンと払うわけにはいかないですしね。

(7)そしてメルクからの和解金を受けて、本庶先生は残りの39%を支払うように要求したと。

  当初、このニュースを見たとき、失礼ですが「ノーベル賞を取った発明だから小野薬品に対して強気に出たのかな?」と思っていましたが、これはノーベル賞の受賞とは関係ないですね。

 また、1%のロイヤリティが40%に跳ね上がるって、今まで経験も聞いたことがないです。触媒のように、試薬レベルでは低く、プラントに導入されるときは高く、という話はありますが、それでもここまで変わるとは。。。
 薬という分野と、訴訟という事情の相乗効果なのでしょうね。

 

 ・・・なおここから先は、私として、あまり理解も納得もできない点のお話。

 メルクからの和解金710億円ですが、じつはこの特許は米国のBMSという会社にライセンスしており、710億円の75%はこのBMS社が、小野薬品は25%(145億円)しかもらっていなかったらしいです。

 つまり、小野薬品は145億円もらったけれども、280億円ほど今回の訴訟で和解金を払った(135億円程度損している)ということになるようです。

 ここで不思議なのが小野薬品とBMSとの関係です。

 小野薬品が本庶先生にライセンス料を渋るのは、自社の利益を最大化しようとする観点からわからなくはありません。
 でも、ライセンスしているとはいえ、特許権者である自分よりも、BMSのほうの取り分が多くなるような状態にするってどういう事情だったんでしょうかね?

 さらに、本庶先生には実施料1%でも渋ったのに、そのライセンス先(BMS)には75%って、確かに、本庶先生が聞いたら怒りますよね。というより怒らないわけがないように思います。

 で、更に、自分の取り分である25%以上の40%を本庶先生に支払うって言ってしまうところがまた訳が分かりません。15%の損が確定することになってしまうので。
 せめて25%の取り分の40%(全体の10%)ということであれば(訴訟費用を無視するとして)何とかまだ利益は確保できると思うのですが。。。

 なお、最近オプジーボ特許については、米国のがん研究の2人の米国人が発明者として加えるように米国連邦地裁に訴えていたとのこと。これはまた別の機会に。

2021年 関東地方発明表彰

 本日、関東地方発明表彰式に千葉県発明協会の理事長として出席しました。関東地方発明表彰は、発明協会が主催、関東甲信越の各発明協会が共催、文部科学省や特許庁等が後援する非常に由緒ある発明賞(今年で73回目)。

 場所はホテルメルパルク長野。久しぶりの新幹線移動。

 長野行きなので長野新幹線と思って探したところ、長野新幹線がなくて焦りましたが、よく考えてみると北陸新幹線に併合されていたんですね。昨年度まで普通に上越新幹線を使っていたのに何を見ていたんだと愕然。

 最近の新幹線は電源コンセントまでついており、パソコンを使うのに電池残量を気にしなくてよいのがすごく良い。スマートフォンのテザリングでネットにもつなげられるので、メールも見れるので仕事がはかどります(遅いけど)。

 前理事長から引継ぎ、私が参加するのは群馬、埼玉、千葉、神奈川、東京、長野と、数えてみたら今年で6回目になります。

 最初に賞状を読み上げたときは、記憶がないくらい緊張したのを覚えていますが、6回目にもなると緊張しますが周りを見る余裕がでてきているようです。人間の「慣れ」というのは本当に素晴らしい。

 来年は山梨県が担当とのことでした。

 受賞された皆様、おめでとうございました。

警告書と回答書

 お客様から「警告書が来たのでどう対応すればよいか」という相談を受けたりします。

 実質的に内容は「警告書」であることもあるのですが、「通知書」等の別の表題だったりします。

 ふつうは文末に「本書面受領から2週間以内に回答なき場合は、~法的処置を~」みたいなことが書いてあるので、受け取った側は相当焦ってしまいます。

 ただし、ここで気を付けるべきは「相手はこちらの情報をとりたいだけの場合がある」ということです。この場合、不必要に情報を与えてはいけません。カモネギ状態(ネギを背負ったカモ状態)になってしまいます。一方で、何も情報を与えないと、解決しないかもしれません。

 また、このような対応は実際のところ、ビジネスライクのようでいて、実は人の感情が大きく影響します。初動を間違えると感情がもつれて結構大変なことになります。お金ではなく、感情のレベルになってしまうともう大変。本来使うべき人とお金と時間を感情のために浪費することになってしまいます。

 また、理想を求めることは非常に重要ですが、現実的な落としどころというのも理解した上で進める必要があります。

 実際にやり取りをしていると、将棋を指している感覚に近いです。「相手がこう来たので、このレベルで返す。」「こう返しては相手を刺激しすぎるからまずい。」「ここは一気に反論の余地なく潰す内容で返す。」「次にこう返して来る可能性があるので、その主張をけん制しつつ刺激しない範囲で準備を匂わせる。」「ここが多分落としどころだからこんな表現とする」のように回答のレベルや内容を調整することが本当に重要です。一言一句や助詞の使い方に意味を持たせる必要があります。この匙加減が非常に重要です。

 また、代理人を使うことで、「代理人に任せてある」という一言でこれ以後の直接対応を避けることができます。

 経験上、このバランスが優れたうちの事務所をよろしくお願いします。という宣伝でした。

 

授業2021/11/09

 今日大学で授業を行いました。14回シリーズのうちの第5回目。

 今回は特許調査のお話。

 特許調査はおおむね下記3種類あるということを事例を用いてご説明。

 ①出願系調査
  特許出願等の出願を行う前に行う調査。
  同じものだと権利化できないので費用の無駄を省く調査のこと。
  ピンポイントで同じ公知例がないかを調べる調査。

 ②開発系調査
  これから新製品の開発などを行うときに行う調査。
  広い範囲にわたり、出願人、出願年、製品要素毎等において行う。
  マーケティングとして行う調査。
  広く浅く調べる調査。ただし気になるものはリストにして監視する。
  パテントマップの具体的なイメージの例について様々な例を用いて説明。

 ③侵害系調査
  開発の結果製品化する段階において、他社特許の侵害がないか調べる調査
  漏れがないよう、また権利の成立状況等まで調べる必要がある

 また、J-Platpatを用いた実際の調査について、ネットワークに接続して実演。

 反省点としては、侵害系調査の場合に請求の範囲に着目して判断するというところで、特許請求の範囲の機能について説明が不足していたのではないかという点、アイデア発表の後に今回の授業を行ってもよかったのではないかという点(つまり第6回と第5回を入れ替えてもよいのではないか)、実演はかなりマニアックな内容になるため、その事前準備が今回は足りていなかったかも。

 来年への反省です。

ソフトウェア特許のコツ①

 ソフトウェア特許が認められるようになって、はや数十年。

 ソフトウェア特許を書くときのコツをメモ。

 ソフトウェア特許とは、コンピュータによるデータ処理を記載していくことによって成立させるものです。

 しかし、コンピュータによるデータ処理は、画面上では見えにくい。
 つまり、画面上に表れていない動作や計算方法については本当にやっているのかどうかわからないことが多い。

 どのような計算を行っているのかがわからない場合、特許がとれたとしても、模倣した者が、本当に自分の計算方法を使っているのかどうかがわからない以上、侵害警告を行うことは難しい場合が多い。

 複雑な式を導入することで、確かに特許性(特許のなりやすさ)は高まりますが、侵害発見が困難になります。請求項に入れるのは最後の手段というくらいに考えておいたほうが良いのです。

 そのため、ソフトウェア特許は、入力情報、出力結果等の確実に画面上に出てくる情報をそのデータ処理の対象とすることで権利化し、その計算方法については可能な限り請求項に入れないことがポイント。

 極論を言ってしまうと、審査官から「これらデータをどのように算出しているのかが曖昧である」といわれて記載不備の指摘をされるくらいがちょうどよいのではないかと、勝手に言い訳。

ボール

 金曜日のフットサルは楽しかったのですが、蹴れず動けず、悲しかった。

 そこで、フットサル用ボールを買ってしまいました!!

新型コロナのアビガン特許

 新型コロナウイルス感染症に対して、世界中でその治療薬開発が行われています。

 ところで、ニュースで「アビガン(一般名:ファビピラビル)」が新型コロナに聞くのでは?という話があったと思います。今日はこのお話。

 ファビピラビルは、抗インフルエンザウイルス剤として開発された物質であり、富山大学と富山化学工業が共同開発した薬であり、すでに特許として成立しています(特許第4355592号「抗ウイルス剤」現特許権者:富士フイルム富山化学株式会社)。

 しかしながら、中国が中国国内だけでなく日本においてもファビピラビルに関する用途発明を特許出願がなされていることがわかっています特願2020-173044)。

 え?そんなことってあるの? と思うと思いますが、残念ながらありうるんです。

 用途発明とは、たとえ既に知られた物質でも、その新たな用途(効果)を発見した場合、その用途に限定した形であれば、特許出願を行い、他の特許要件を満たす限りにおいて成立させてしまうことができるのです。

 つまり、今まで新型コロナウイルスなんて存在していなかったのですから、実証データさえあれば「新たな用途の発見」という主張はそう難しくはなさそうですよね?

 このブログの執筆時現在、日本の上記特許出願については、特許庁から拒絶理由が通知されているようですが、この結末について非常に興味があります。

 もし仮に、中国の特許出願が成立した場合、 基本特許の権利者である富士フイルム富士化学であっても、新型コロナウイルスの治療薬として出荷しようとする場合は、中国人民解放軍(のアカデミー)に特許料の支払いをしなければならなくなってしまいます。。。

 

医薬品と特許①

 最近の新型コロナウイルス感染症の拡大の状況下で、特許の話が出てくるときがあります。

 国内的には「裁定制度」であり、国際的には「特許の南北問題」や「パテントプール」です。

 今日はまず国内的な話題「裁定制度」のおはなし。

 まず、”医薬品”は特許の対象になります。
 つまり「新型コロナウイルス感染症の治療薬」等は特許の対象になる、ということです。もちろん、ワクチンも。

 一方、製薬会社は人の病気の治療薬を開発する公益的な面を持つとはいえ、会社である以上、営利を追求する団体です。
 そのため、利益を最大化するために医薬品について特許権を取得し、他社が同じ医薬品を製造販売できないようにします。

 一方で、皆さん感じると思うのです。
 「こんな人類の未曽有の危機のときにもお金優先になってしまったらどうするの?」って。
 確かに、特許権者がすごく効果のある薬を開発して特許をとったけど、わざと生産量を落として不足な状態を作り、価格を釣り上げて販売してしまったらどうなるでしょう?
 命を人質に取られてしまいますよね?

 そこで、出てくるのが「裁定制度」。

 いくつか種類があるのですが、今日話題にする裁定制度は、ざっくり言うと
公共の利益のために他人(特許権者以外)にもその特許を使えるようにする」という制度です。
 これは経産大臣に求めることができます

 この制度によって、上記のような問題が生じうる場合、強制的に、特許権者でない者に特許の対象となる医薬品を製造販売させることができるようになるのです。

 ただ、今まで裁定制度が使われた例はなく「抜かれない伝家の宝刀」状態であり、この度の新型コロナウイルス感染症では使われるのではないか?と思ったのですが、国内的にはまだ特許が取得されたという話はあまり聞かず、やはりまだ使われないようです。

フットサル

 新型コロナの感染状況が落ち着きつつある状況で、会派の同好会の活動が再開されつつあります。

 そこで本日夜、1年半以上ぶりに会派主催のフットサル練習会が開催されましたので、早速参加しました。春秋会だけでなく他の会派の知財関連の方々が参加していました。

 ボールを蹴るのは久しぶり(数十年ぶり!!)でしたが、何とかなるのではないかと甘く見すぎていました。まさか目の前30cm先のボールに足が出せないとか。。

 次回は何とか恥をかかないように鍛えたいと思います!